相続した家を売ったら、税金と確定申告は何を確認しますか?
ご相談
母から相続した実家を売る予定です。相続税の手続きは済みましたが、売ったときにも税金がかかるのでしょうか。母が買ったときの契約書は見当たりません。「空き家なら3,000万円の控除がある」と聞きましたが、税金がゼロになれば確定申告もしなくてよいのか、よく分かりません。
売却の利益と特例を確認し、必要な確定申告に備えます
相続した家を売ると、売却代金から取得費と売却のための費用を引いた利益に、所得税等と住民税がかかります。相続税とは別です。特例を使って税額がゼロになる場合も、申告が必要です。まず、親が購入したときの契約書など、取得費の資料が手元にあるか確認しましょう。
売却前なら、家の使い方や解体の予定も特例の条件に関係します。売却済みなら、契約書と領収書を保管し、申告する年と期限を確認します。
税金の確認に使う資料
- 親が買ったときの価格と購入時期売却の税金は、原則として親の取得費と取得時期を引き継いで計算します。相続税評価額や現在の査定額を、そのまま購入価格として使うわけではありません。
- 今回の売却価格と、契約・引渡しの日付売却前なら予定している金額と時期を、売却後なら契約書と決済時の精算書を確認します。年末に契約して翌年に引き渡す場合などは、どちらの年分で申告するかも確かめておきます。
- 親の居住状況と、相続後の実家の使い方空き家の特例を検討する場合は、親が一人で暮らしていたか、亡くなったあとに誰かが住んだり貸したりしていないかを確認します。解体や耐震改修の予定も、売却の条件を決めてしまう前に確かめておきます。
相続した家の売却には、どんな税金がかかる?
家を相続したときにかかる相続税と、売ったときの譲渡所得にかかる税金は別です。相続税がかからなかった場合でも、売却によって利益が出れば所得税や住民税がかかることがあります。
売却収入 − 取得費 − 譲渡費用 = 譲渡所得。利用できる特別控除がある場合は、ここからさらに控除額を引いた金額を基に税額を計算します。
土地や建物の譲渡所得は、給与などと分けて税額を計算します。2026年の売却益にかかる税金には、所得税・復興特別所得税と住民税があります。売却価格の全額に税率を掛ける計算ではありません。
取得費は、親の購入代金などを引き継ぐ
相続した日の時価や相続税評価額に置き換えません。建物は購入代金等から減価償却費相当額を差し引くため、親の購入時期、建物の構造、購入・建築代金の資料が計算に役立ちます。
譲渡費用は、売るために直接かかった費用
仲介手数料、売主が負担した契約書の印紙代などです。修繕費や固定資産税などの維持管理費を、すべて売却費用として差し引けるわけではありません。
取得費の扱いは、相続した不動産の取得費と取得時期で確認できます。売却費用の範囲は、譲渡費用となるものに示されています。登記や売却に払うお金の全体と手取りの考え方は、売却費用の記事で説明しています。
購入代金が分からない場合などには、売却金額の5%を取得費とする方法があります。ただし、この方法で計算する場合は、相続登記費用を取得費へさらに加えることはできません。購入資料の有無が税額に影響するため、見当たらない場合も取得費をゼロと決めつけず、残っている資料を確認します。
相続してすぐ売っても、それだけで短期譲渡所得になるわけではありません。長期譲渡所得か短期譲渡所得かを判定する際も、原則として親の取得時期を引き継ぐためです。売った年の1月1日時点の所有期間が、5年を超えるかどうかを確認します。
所有期間が5年を超える:長期譲渡所得
2026年の通常の税率は合計20.315%です。所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%を合わせた税率です。
所有期間が5年以下:短期譲渡所得
2026年の通常の税率は合計39.63%です。所得税30%、復興特別所得税0.63%、住民税9%を合わせた税率です。
いずれも、取得費・譲渡費用と使える特別控除を差し引いた課税対象の金額に対する税率です。個別の控除や軽減税率が関係する場合もあります。国税庁の長期譲渡所得・短期譲渡所得の計算案内を基に、売却する年分の税制を確認します。
売却前に確認したい、空き家と相続税の特例
相続した実家で確認したいのが、空き家の特別控除と、相続税の一部を取得費へ加算する特例です。同じ不動産について両方を併用することはできないため、条件を満たすかだけでなく、どちらを使うかも確認します。
相続した空き家の特別控除
一定の要件を満たすと、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。2024年以後の売却で、対象の家屋と敷地等を取得した相続人が3人以上の場合は、上限が2,000万円になります。売却代金から直接この額を引く制度ではありません。
相続税の一部を取得費へ加算する特例
売った財産を相続した方に相続税が課税され、一定期間内に売るなどの条件を満たす場合に、対応する相続税の一部を取得費へ加算できます。納めた相続税の全額を、そのまま差し引くものではありません。
空き家の特例は、国税庁の適用条件に沿って確認します。1981年5月31日以前に建築され、区分所有建物でないこと、原則として親が一人で住んでいたことなどが条件です。老人ホーム等に入所していた場合は別の要件もあります。
相続後に家を住居・賃貸・事業に使うと、空き家の特例の条件を満たさなくなることがあります。売るまで一時的に貸す、家族が住むといった予定がある場合は、実行する前に確認します。
空き家の特例を使うには、相続が始まった日から3年後の年末までに売る必要があります。現行制度は2027年12月31日までの売却が対象なので、両方の期限を満たす必要があります。売却代金が1億円以下であることも条件です。同じ実家を他の相続人も売る場合や、分割して売る場合は、合計の売却代金で判定することがあります。
建物の耐震性や取壊しにも条件があります。2024年以後の売却では、一定の条件で売却後から翌年2月15日までの耐震改修・取壊しを対象とする方法もあります。「解体すれば使える」と先に工事を頼んでしまわず、売却方法、工事の担当者や期限、証明資料を確認してから決めます。
取得費加算の特例を使うには、相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までに売る必要があります。国税庁の取得費加算の案内に照らし、相続税の申告書と売却予定日を基に確認します。
ここで説明した空き家の特別控除と相続税の取得費加算は、所定の書類を添えて確定申告をすることが適用の要件です。「控除で税金がなくなるから申告も不要」とは判断しません。
いつ、誰が、どの資料で確定申告する?
共有名義の家を売った場合は、それぞれの持分や収入・費用に応じて譲渡所得を計算します。申告が必要なときは、売却した方がそれぞれ自分の所得として申告します。
譲渡所得の申告期間は、通常、売却した年の翌年2月16日から3月15日です。休日による日付の変更は、その年分の案内で確認します。譲渡所得の申告期限の案内では、譲渡日は原則として引渡しの日で、契約の効力が発生した日を用いることも認められています。契約と引渡しが年をまたぐ場合は、どの年分で申告するかを確認します。
- 譲渡所得の計算に使う資料をそろえる
購入時の契約書・領収書、売却契約書、決済の精算書、仲介手数料などの領収書を保管します。土地と建物の金額が分かる資料、相続時の取得者や持分が分かる資料も合わせて確認します。
- 使う特例に合わせて証明資料を用意する
空き家の特例では、市区町村の「被相続人居住用家屋等確認書」や、耐震・取壊し等を示す資料などが必要です。取得費加算では、相続税の申告書を基にした計算明細書を用意します。必要な証明資料は売り方によって変わります。
- 他の所得も含めて、申告書と内訳書を作成する
土地・建物の売却では、確定申告書、分離課税用の第三表、土地・建物用の譲渡所得の内訳書などを作成します。税額は給与等と分けて計算しますが、申告の手続きは他の所得と一緒に行います。
利益が出た場合の申告義務は、他の所得や所得控除、申告不要制度なども含めて確認します。反対に、損失が出た場合も、使う特例によって申告が必要になることがあります。納税の有無だけで判断せず、国税庁の確定申告の案内と利用する特例の要件を確認してください。
購入価格を示す資料がない、建物の減価償却の計算が分からない、複数の特例が候補になる、共有や代金の分配で誰の所得になるか判断がつかない場合は、資料を基に税務署や税理士へ確認する場面です。「税金はかかりますか」と尋ねるだけでなく、契約・購入資料、相続税の申告書、家の利用履歴などを示すと、確認する内容を具体化できます。
さいたま市の家で空き家特例を使う場合
さいたま市内の対象物件では、市の被相続人居住用家屋等確認書の案内に沿って申請します。提出先は環境総務課で、各区役所や支所では受け付けていません。交付には1週間程度、確定申告前の繁忙期にはそれ以上かかることもあるため、申告期限の直前まで待たずに準備を進めます。
市の確認書は、確定申告に使う書類の一つです。交付されたことだけで特例の適用が確定するわけではありません。市への申請と、所得税の確定申告をそれぞれ進めます。
私なら、売却条件を決める前に確認します

小野田 敦士
- 司法書士
- 行政書士
- 宅地建物取引士
私は、相続登記と実家の売却の予定を一緒に確認します。税金のことを申告の時期まで後回しにすると、家を貸すか、解体して売るかといった判断に、特例の条件を反映できないことがあります。
税額や特例の適用は税務署や税理士へ確認し、その内容を踏まえて売却の条件や日程を考えます。登記や売却の準備は当方でご相談いただけます。購入時の資料がそろっていなくても、今ある書類と売却のご希望をお聞かせください。
税務の確認も踏まえ、登記と売却の予定を考えます
- 相続人と不動産の確認から相続登記までの手続き
- 実家の状態に応じた査定と売却方法の相談
- 登記の準備と契約・引渡しまでの日程の調整
個別の税額や特例の適用、税務申告については、税務署や税理士へご確認ください。
売却前なら、現在の状態での価格の目安を確認できます。
実家の簡易査定を試す相続登記の前や、売るかどうかまだ決めていない段階でも利用できます。関連Q&A
相続税を納めたら、売却の税金はかかりませんか?
相続税と、売却の譲渡所得にかかる税金は別です。相続税が課税された場合は、売った財産に対応する相続税の一部を取得費へ加算できる特例があります。売却時期などの条件と、確定申告で必要となる手続きを確認します。
空き家の特例で税金がゼロなら、確定申告は不要ですか?
空き家の特別控除を使うためには、所定の書類を添えた確定申告が必要です。控除を引いたあとの税額がゼロでも申告します。市区町村の確認書を受け取るだけでは、税務署への申告は完了しません。
親の購入時の契約書がないと、取得費はゼロですか?
ゼロと決めてしまう必要はありません。手元に残っている資料から取得費を確認するほか、購入代金が分からない場合などには売却金額の5%を取得費とする方法があります。この方法で計算する場合は、相続登記にかかった費用をさらに取得費へ加えることはできません。
相続してすぐ売ると、短期の高い税率になりますか?
所有期間は原則として親の取得時期を引き継いで計算します。親が長く所有していた家なら、相続の直後に売っても長期譲渡所得に該当することがあります。売った年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えているかを確認します。
相続した実家に自分で住んでいた場合も、空き家の特例ですか?
相続したあとに住居として使っていた場合は、ここで説明した空き家の特例の条件を満たしません。ご自身の住まいとして使っていた家の売却では、マイホームを売ったときの特例などを別に確認します。