相続した不動産の売却費用は?手取りをどう見積もりますか?
ご相談
母から相続した土地と家を売ることになり、不動産会社から売却価格の目安を聞きました。ただ、仲介の費用や登記の費用を引いたら、手元にいくら残るのかが分かりません。売却代金を受け取るときに全部使ってよいのか、後から税金を払うために残しておくべきなのかも知りたいです。
売却価格から、登記・売却の費用と税金を差し引いて考えます
相続した不動産の手取りは、売却価格から相続登記や売却の費用、譲渡益にかかる税金を差し引いて見積もります。借入金を返済する場合は、その返済分も差し引きます。売却前なら査定額と費用の見積書を使い、購入時の資料を基に税金の見込みも確認しておきます。
売却代金が入金された後に、所得税や住民税を納めることがあります。決済日に口座へ入った金額を、そのまま全部使えるお金として扱わないようにします。
手取りの見積もりに必要な資料
- 査定書と、登記・売却費用の見積書売却前は査定額を基に計算し、売買契約が決まったら契約価格で計算し直します。見積書は金額だけでなく、対象となる業務、別途かかる実費、支払う時期も確認します。
- 亡くなった方が購入したときの契約書や領収書購入代金や購入時期は、譲渡所得の税金を計算するための資料です。手元にある書類を確認し、見当たらない場合でも、その状態のまま税務署や税理士へ相談できます。
- 借入金がある場合の残高と返済条件住宅ローンなどが残っている場合は、金融機関へ残高と売却時の返済額、手数料を確認します。借入れがなければ、この返済額を手取りから引く必要はありません。
相続登記から売却までに、どんな費用がかかる?
- 相続登記の準備・申請
相続登記では、登録免許税、戸籍や証明書の取得費用、依頼する場合の司法書士報酬を見積もります。登録免許税は免税になる場合を除き、申請の際に納めます。売却代金を受け取る前に用意するお金もあるため、報酬や実費の支払時期も依頼先の見積書で確認します。
- 売買契約から決済・引渡し
仲介による売却では仲介手数料がかかります。紙の売買契約書の印紙税、必要に応じた抵当権抹消の費用なども見積もります。片付けや測量、解体が必要か、費用を誰が負担するかは売却条件によるため、先に発注せず不動産会社へ確認します。
- 売却後の税金
譲渡所得が生じると、所得税・復興特別所得税・住民税が関係します。売却時の諸費用とは別に税金の見込みを確認し、納付するためのお金を残しておきます。
相続登記にかかる費用の内訳は、相続登記の総費用の記事で説明しています。仲介手数料などの金額や支払時期は、個別の見積書や契約で確認してください。
固定資産税などの精算金は、契約に応じて買主から受け取る場合もあります。費用として一律に差し引かず、決済の精算書で受取額と支払額をそれぞれ確認します。
売却代金のすべてに所得税がかかる?
税金を計算する際は、売却収入から「取得費」と「譲渡費用」を差し引きます。その残った利益が譲渡所得です。特別控除が使える場合は、さらに控除してから税額を計算します。
取得費
土地や建物を購入したときの代金や手数料などです。相続では、原則として亡くなった方の取得費を引き継ぎます。建物は減価償却費相当額を差し引くため、購入代金をそのまま使うとは限りません。
譲渡費用
不動産を売るために直接かかった費用です。仲介手数料や売主が負担した印紙税などが該当します。修繕費や固定資産税などの維持管理費を、すべて譲渡費用として引けるわけではありません。
取得費は、税金を計算するために差し引く金額です。亡くなった方が過去に支払った購入代金を、今回の売却代金からもう一度支払うわけではありません。借入元本の返済は手元の現金を減らしますが、返済額自体は譲渡費用に含めません。
詳しくは国税庁の譲渡所得の計算と譲渡費用の範囲で確認できます。
購入代金が分からない場合などには、売却金額の5%を取得費とする方法があります。この方法では、相続登記の費用などを取得費にさらに加えることはできません。資料の有無によって税額が変わるため、相続した不動産の取得費と取得時期を確認し、税務署または税理士へ相談してください。
税率は所有期間等によって変わり、所有期間は原則として亡くなった方の取得時期を引き継いで判定します。所得税・住民税と復興特別所得税の計算も踏まえ、売却価格に一律の税率を掛けて見積もらないようにします。
手取りの計算例:2,000万円で売れたら?
売却価格2,000万円、相続登記と売却などの支出100万円、税金の見込み200万円と仮定します。費用や税金の相場ではなく、税率から税額を算出した例でもありません。借入返済、固定資産税などの精算、相続税、相続人同士の分配は含めていません。
売却価格
2,000万円
登記・売却等の支出
100万円を差し引く
税金の見込み
200万円を納税のために残す
全体の手取り見込み
2,000万円 − 100万円 − 200万円 = 1,700万円
この1,700万円は、登記から売却後の税金まで含めた全体の手取りです。決済日に口座へ振り込まれる金額とは違います。手付金を先に受け取っていれば決済時は残代金となり、費用にも支払い済みのものと決済時に支払うものがあります。
全体の手取りを計算するときは、すでに払った登記費用も含めて支出を合計します。一方、決済日に受け取る残代金から計算するときは、支払い済みの費用をもう一度差し引かないようにします。税額が分からない段階では、計算結果は「税金を引く前の見込み」です。家族で分ける金額は、納税のために残すお金も確認してから決めます。
手取りは、支払時期も合わせて確認します

小野田 敦士
- 司法書士
- 行政書士
- 宅地建物取引士
売却価格の目安を知りたい段階なら、査定と相続登記の見積もりを並行して進められます。私は、相続登記の準備と売却の予定に合わせて、先に用意するお金と、売却代金を受け取ってから払うお金を確認します。
ご相談の時点で金額が分からない費用があれば、見積もりに含まれているか、別途必要になるのかを確認します。売却代金を受け取るまでに、どんな支払いがあるかも一緒に考えます。
相続登記と売却の予定を、費用の支払時期まで整理します
- 相続登記に必要な書類と、売却までの段取りの確認
- 売買契約・決済で精算する費用の整理
- 売却価格、借入金の残高、相続人間の分け方を踏まえた売却相談
譲渡所得の税額や控除を適用できるかどうかは、税務署または税理士へご確認ください。相続登記の相談だけでもご依頼いただけます。
売却価格の目安から、売却の予定を考えたい方は、まず査定をご利用ください。
実家の簡易査定を試す査定額は売却を決める前の目安として確認できます。関連Q&A
売却価格から仲介手数料だけを引けば、手取りになりますか?
手取りにはなりません。契約や決済で精算する費用、借入金の返済、相続人同士の清算金、売却後に納める税金なども分けて確認します。
相続した不動産の購入価格が分からないと、税金はかかりませんか?
購入価格が分からなくても、税金がかからないと決まるわけではありません。亡くなった方の取得費を引き継ぐ考え方や、資料がない場合の扱いを税務署または税理士へ確認します。
相続登記の費用は、税金の計算で差し引ける?
事業用ではない土地や建物の場合、相続人が支払った登記費用を取得費に含められます。ただし、売却金額の5%を概算取得費にする場合は、その登記費用をさらに加えることはできません。
空き家の3,000万円特別控除は使えますか?
相続した空き家なら一律に使えるわけではありません。建築時期や居住状況、売却時期などの条件があり、適用には確定申告も必要です。国税庁の空き家の特例の案内を基に、売却前に税務署または税理士へ確認してください。
相続登記が終わる前でも査定を依頼できますか?
相続登記が終わっていなくても査定を依頼できます。誰が不動産を取得して売主になるかを確認しながら、登記の準備と並行して進めます。詳しくは相続登記前の実家の査定で説明しています。