兄弟の共有名義になった実家を売るには?|合意と準備のかんたん診断
ご相談
兄弟で相続した実家が、共有名義になっています。売って代金を分ける話は出ていますが、価格や引渡し時期までは決まっていません。一人が窓口になれば、ほかの兄弟は契約や登記の書類を用意しなくてもよいのでしょうか。代金をどの口座で受け取るかも気になっています。
共有名義の実家は、全員で条件を決め、各自の売却準備を進めます
実家全体を通常の方法で売るには、共有者全員の合意が必要です。まず、売却の意向だけでなく、価格・時期・費用の希望も一人ずつ確認します。そのうえで、契約、登記書類、代金の受取りを準備します。一人が連絡窓口になっても、ほかの共有者の意思確認や書類の準備は必要です。
共有名義を選んだ経緯も、実家を今後どうしたいかという希望も、ご家族によって違います。すでに共有名義になっているのであれば、今の名義と合意内容を確かめながら進めます。売却するために、必ず事前に一人の名義へ変えなければならないわけではありません。
共有の実家を売る前に確認したいこと
- 土地・建物それぞれの名義と持分手元の登記事項証明書があれば確認します。古い記録しかない場合や持分が分からない場合は、仲介会社や司法書士に現在の登記を確認してもらいます。土地と建物で共有者が違う場合もあります。
- それぞれが売却についてどう考えているか売却に賛成しているかだけでなく、価格や引渡しの時期、家財の片付けについて希望があるかを確認します。代表者が話している内容と、共有者それぞれの認識が同じかも確かめます。
- 誰が連絡を受け、契約・決済にどう対応するか誰を連絡窓口にするか、各自の書類の準備状況、契約や決済に出席するか委任するかの予定、代金の受取り方を確認します。遠方に住んでいる人がいる場合も、早めに担当者へ伝えます。
共有名義の実家を売る前のかんたん診断
進捗 1 / 3問
実家全体を売ることについて、どこまで話せていますか?
兄弟それぞれの意向を、実際に確認できている範囲で選びます。
質問と結果の目安をまとめて読む
実家を共有している兄弟で、売却についてどこまで話せているかを3問で確認します。回答に合わせて、合意、売却条件、書類や送金のうち、次に確かめることを案内します。
- 実家全体を売ることについて、どこまで話せていますか?
兄弟それぞれの意向を、実際に確認できている範囲で選びます。
- 全員が売ることに賛成している
- まだ話し合いの途中か、意向を聞けていない
- 反対する人がいる、または話し合いが難しい
- 価格や引渡しの時期、費用の負担は決まっていますか?
「売ってもよい」という話だけか、具体的な条件まで確認できているかで選びます。
- 全員で確認し、合意できている
- 一部の希望しか確認できていない
- これから話し合う
- 各自の書類や、代金の受取り方は確認できていますか?
契約や登記の書類と、振込先や立替費用の精算方法を確認できているかで選びます。
- 全員分を確認できている
- 書類か代金の扱いに未確認の点がある
- まだ確認していない
結果の目安と次にすること
今の共有関係で、売却の合意と準備をどこまで確認できているかを確かめるものです。
- 売却に賛成できない理由と、話し合える方法を確認します
実家全体の通常の売却には、共有者全員の合意が必要です。価格の問題か、実家を残したいのかなど、それぞれの希望を確かめます。対立があり交渉が必要なときは、弁護士への相談を検討します。
次にすること:- 売る前提の約束を先にしない:話し合いが難しい場合は、売却の合意や共有関係の解消について弁護士へ相談します。
- 兄弟それぞれの今の意向を確認します
まだ意向を聞けていない人がいるなら、価格や契約の約束より先に、売却についての希望を確認します。連絡窓口を決める場合も、本人への確認方法を用意します。
次にすること:- 売ることと、売る条件を順に話す:すぐに決められない点はそのまま共有し、次にいつ確認するかを決めます。
- 価格や引渡しの時期、費用について全員で確認します
売却への賛成だけでは、値下げの許容範囲や引渡しの時期まで決まったことにはなりません。購入希望者から条件の提示があったときに、誰へ伝え、どう確認し合うかも決めておきます。
次にすること:- 合意した条件を記録に残す:希望価格や価格変更の確認方法、家財の片付け、費用の負担を、仲介会社とも共有できる形に残しておきます。
- 共有者ごとの書類と、代金の受取り方を確認します
各自の登記識別情報や印鑑証明書などの準備と、契約や決済への参加方法を担当者へ確認します。代金の振込先やそれぞれが受け取る金額、立替金の精算方法も、決済の前に決めておきます。
次にすること:- 一人分ずつ、未確認のものを確かめる:契約の代理と登記申請の委任は分けて確認します。代金を代表者が受け取る場合も、受領する権限と分配の方法を先に確かめておきます。
- 全員で決めた条件と、契約・決済の準備を確認します
全員で確認した内容を、売買契約や決済の予定に反映していく段階です。購入希望者から条件の変更を求められたときも、その内容について共有者全員の意向を確かめて進めます。
次にすること:- 契約前に、書類と振込予定を確認する:連絡窓口だけでなく、各共有者の意思確認、書類の受け渡し、入金確認までの段取りを確かめておきます。
次に確認することの目安です。売却できることや代理権の有無を確定する診断ではありません。回答は保存・送信されません。
共有名義のまま売るときの流れ
全員の合意があれば、共有名義のまま各持分を買主へ移転して売却できます。登記名義をあらかじめ一人へ集め直さなければ、売却できないわけではありません。
- 共有者と、売る不動産の範囲を確認する
土地、建物、私道持分などの登記記録を確かめます。相続のときの遺産分割協議書も確認し、共有で取得する合意が済んでいるのか、まだ遺産分割が終わっていないのかを担当者と確かめます。
- 売却条件と、確認の方法を決める
査定を参考に、売出価格、価格変更、引渡し時期、費用の負担を話し合います。誰が仲介会社と連絡し、購入申込みや条件変更を全員にどう伝えるかも決めます。
- 契約と登記の書類を、各自で準備する
仲介会社と司法書士から、共有者ごとに必要な書類と本人確認の案内を受けます。代理で契約する場合は、本人の意思と任せる範囲を確認し、委任状などを用意します。
- 全員が確認した条件で契約し、決済の準備をする
売買契約書で、売主、対象の持分、価格、引渡し日などを確認して契約します。決済に向けて、必要書類、代金の送金先、各自の受領額、家財の搬出や鍵の引渡しまでの予定をそろえます。
- 代金の受取りと登記・引渡しを行い、費用を精算する
司法書士が登記書類を確認し、買主からの入金を売主側で確かめます。決済の段取りに従い、司法書士が所有権移転登記を申請し、売主と買主が引渡しを行います。共有者間の立替金や送金は、合意した明細に従って精算し、記録を残しておきます。
「売ってよい」と、価格や時期への合意は別です
兄は早く売りたい、弟は価格を優先したいというように、売却自体には賛成していても、実際の購入申込みを受けたときの判断が分かれることがあります。値下げに応じるかや家財処分の費用負担は、連絡窓口の人だけで決められるとは限りません。
価格と、条件変更を確認する方法
売却時の希望価格や、購入申込みへの返事、値下げを検討するときの連絡方法を決めておきます。窓口として返答する人と、最終的に条件を承諾する人を曖昧にしないようにします。
引渡しまでに必要な作業と費用
居住している人の転居、家財の片付け、残す物、修繕などを確認します。誰が手配し、誰が費用を立て替え、売却代金から何を精算するかも話し合います。
連絡窓口と、代理人の権限
連絡窓口を一人に決めたことと、売買契約の締結を任せたことは別です。代理人に任せる場合は、対象の不動産と契約条件、代金の受領を含めて何を任せるかを明確にします。
代理による取引では、委任状だけでなく本人の売却意思や代理権の範囲を確認します。不動産流通推進センターの解説でも、共有者の一人が他の共有者を代理する場合の契約書の表示と、本人確認について説明されています。
通常の売却では、一部の共有者の賛成だけで実家全体の売却を決めることはできません。反対している人が実家を残したいと考えているのか、価格や時期に納得できないのかを確認します。対立があり交渉が必要なときは、共有物分割なども含めて弁護士へ相談します。
最高裁は令和8年8月28日、借地上の建物の持分について、借地借家法14条による地主への建物買取請求権は成立しないと判断しました。この判決では、地主が自らの意思によらず共有者になることによる不利益も理由に挙げています。判断の対象は借地借家法14条の請求権であり、共有持分の売却や共有物分割を一般に否定したものではありません。
契約・登記書類と送金先は、共有者ごとに確認します
| 準備すること | 共有名義で確認する点 |
|---|---|
| 売買契約の売主と、契約の進め方 | 共有者全員が売主になります。一人が代理する場合も、誰を代理し、どの持分を売るのかを契約書と委任状で明確にします。全員が同じ場所に集まれるかと、契約に参加する意思があるかは別です。 |
| 登記識別情報または権利証 | 各共有者の、どの不動産・持分に対応する書類かを確認します。相続登記の完了後に受け取った書類も対象です。見当たらない場合は、決済直前まで待たず司法書士へ伝えます。 |
| 印鑑証明書・本人確認書類・委任状 | 売却の登記に使う印鑑証明書は、原則として作成後3か月以内のものが必要です。相続登記の際に使ったものを、そのまま使えるとは限りません。必要な通数と取得時期、契約の代理と登記申請の委任を、それぞれ確認します。 |
| 代金を受け取る口座と金額 | 各共有者の口座へ振り込むのか、権限を確認した代表者が受け取って分配するのかを、買主・仲介会社・関係する金融機関と事前に確認します。手付金と残代金について、誰がいくら受け取り、どう精算するかを記録しておきます。 |
| 立替金と、精算後の分配 | 売却代金、各自に帰属する額、立替費用、差し引く金額を明細にします。持分割合と異なる額を送金する場合も、何の精算なのかを明確にします。かかった費用の精算と、財産を無償で渡すことは別です。税務上の取扱いは個別に確認します。 |
売買の登記に必要な添付書類は、法務局の売買による所有権移転登記の記載例でも確認できます。権利証の再発行や、登記識別情報の再通知はできません。提供できないときの確認方法と費用・日程は、担当する司法書士へ早めに確かめます。
売買契約の締結、登記申請、代金の受領について、それぞれ誰が行い、どこまで任せるかを確かめます。代理を立てる場合は、必要な委任書類と本人確認の方法を、仲介会社と司法書士の案内に沿って準備します。
私なら、共有にする前には換価分割の方法もおすすめします

小野田 敦士
- 司法書士
- 行政書士
- 宅地建物取引士
これから相続の分け方を決める段階で、売却が決まり、相続人同士で連絡を取り合え、代金の分け方も合意できるのであれば、私は換価分割のために代表者一人へ相続登記する方法をおすすめしています。売買契約や登記書類、代金の受取りについて、売主として手続きする人を一人にできるためです。
代表者だけで自由に売ってよいという意味ではありません。売却条件の決め方、費用、分配割合、送金の時期を協議書に記載し、実際の精算まで合意どおりに行います。代表者が、ほかの相続人へ説明と精算を続けられるかも確認します。
すでに兄弟で共有取得する遺産分割が終わっている場合は、売却のためだけに名義を一人へ変えることを一律には勧めません。持分の移転という別の手続きや費用が生じるため、現在の登記と合意内容を確かめ、共有名義のまま売る方法から検討します。
換価分割で一人へ相続登記する場合の税務は、国税庁の照会事例も参考になります。これは調停で換価分割を決め、売却手続きのために一人へ相続登記し、調停内容どおりに代金を実際に分配した事例です。ご自身の場合における協議書と分配の取扱いは、税理士等への確認も含め、登記の前に確かめます。
全員の合意から、売却の書類・受取りまで相談できます
- 現在の名義・持分と、売却する土地・建物の確認
- 合意した売却条件に沿った、契約・登記・決済の準備
- 各共有者の書類と、代金の受取り・費用精算の段取り
- 共有にする前の遺産分割・換価分割と相続登記の相談
共有者間の対立や、持分の取得・共有関係の解消を巡る交渉が必要な場合は、弁護士へ相談する範囲です。
名義と持分、兄弟で話せている内容、書類の準備状況など、分かる範囲から伺います。全員の合意がある場合の売却と登記を、一緒に準備できます。
共有している実家の売却を相談する関連Q&A
兄弟の過半数が賛成すれば、実家全体を売れますか?
通常の売却は、持分や人数の過半数だけでは決められません。共有者全員の合意が必要です。合意が難しい場合の共有物分割などは、通常の仲介売却とは別の手続きとして検討します。
窓口を一人にすれば、ほかの兄弟の書類はいりませんか?
連絡窓口を一人にしても、各共有者の意思確認と必要書類の準備がなくなるわけではありません。代理にする場合は、任せる内容と本人確認、契約・登記それぞれの委任書類を担当者と確認します。
登記識別情報を持っていない兄弟がいたら、売れませんか?
登記識別情報を提供できないときは、司法書士による本人確認情報の提供などの方法を検討します。再通知や権利証の再発行はできないため、担当する司法書士へ早めに伝え、利用できる方法、費用、日程を確認します。
代金を一人の口座にまとめてもよいですか?
当然に代表者一人へ全額振り込めるとは限りません。全員の合意と受領権限、買主や金融機関の取扱いを先に確認します。各自の帰属額、費用の精算、分配後の送金記録も残します。
共有名義なら、売る前に一人の名義に変えた方がよいですか?
共有名義のまま全員で売ることもできます。すでに共有取得の遺産分割が終わっているか、法定相続分の登記だけなのかで、検討する手続きが変わります。共有にする前の換価分割と、共有後の持分移転は分けて考えます。