相続人の一人が遺産の分け方に反対しています。相続登記は進められますか?
ご相談
父が亡くなり、実家は長男である私が相続するつもりで話を進めてきました。母と妹は賛成していますが、弟は「その分け方では納得できない」と言っています。遺産分割協議書にも印鑑を押してくれません。ほかの相続人だけで、実家の相続登記を進めることはできますか。
印鑑の問題ではなく、遺産の分け方に合意できていない状態です
弟さまが分け方に反対しているのであれば、ほかの相続人だけで実家を長男一人の名義にする相続登記はできません。遺産分割は、相続人全員の合意が必要だからです。
この場合に確かめたいのは、なぜ印鑑を押さないのかではなく、遺産の分け方のどこで意見が分かれているのかです。実家を誰が相続するか、実家をいくらと考えるか、ほかの財産との釣合いをどうするか。止まっている点によって、その後の話合いも相談先も変わります。
家族で何度も話したのにまとまらないと、ご自身の説明が足りなかったのではないかと感じる方もいます。ただ、相続には、これまでの家族関係や住まいへの思いも重なります。すぐに答えが出ないことは珍しくありません。まずは、登記で確認できる事実と、まだ合意できていないことを分けるところから始められます。
何について意見が分かれているのかを確認します
- 実家を誰が相続するか長男が住み続けるのか、売却するのか、共有にするのかなど、実家そのものの扱いについて考えが一致しているかを確認します。
- 実家の価値と、ほかの遺産との釣合い一人が実家を相続する代わりに支払う金額や、預貯金などの分け方で意見が分かれていることがあります。話合いに必要な財産と評価の資料も確かめます。
- 相続人だけで話合いを続けられる状態か条件が分かれば話せるのか、すでに当事者同士では話すことが難しいのかを確認します。交渉が必要な段階では、司法書士ではなく弁護士へ相談することになります。
話合いの状態によって、次の進み方が変わります
相続登記の書類を作り直すだけで解決する問題ではありません。まず、現在の登記、相続人、分かっている遺産を確認したうえで、話合いを続けられるのか、第三者を交える段階なのかを見ていきます。
相続人だけで、まだ話合いを続けられる場合
実家の登記事項、遺産の全体、評価額など、判断に必要な情報をそろえます。何について意見が違うのかが具体的になれば、条件を見直して合意できることがあります。
一方の代理人による交渉が必要な場合
誰がどれだけ取得するかについて、一人の相続人の立場からほかの相続人と交渉する業務は弁護士の範囲です。司法書士が一方の代理人となって、分け方への同意を求めることはできません。
相続人だけではまとまらない場合
家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立て、裁判官と調停委員を交えて合意を目指す方法があります。調停でまとまらない場合は、原則として審判へ移ります。
相続登記の期限が近いときは、話合いと期限を分けられることがあります
期限が近いからといって、納得できていない分け方を急いで決める必要はありません。遺産分割がまとまるまで時間がかかる場合は、相続人申告登記によって、相続登記の申請義務へ先に対応できることがあります。
相続人申告登記をしても、実家を誰が相続するかが決まるわけではありません。期限への対応をしたあとも話合いは続き、遺産分割が成立したときは、その内容による相続登記が必要です。詳しくは「相続人申告登記をすれば相続登記は終わるのか」で説明しています。
私なら、協議書を見る前に、何について意見が分かれているのかを聞きます

小野田 敦士
- 司法書士
- 行政書士
- 宅地建物取引士
まず現在の登記と相続人、分かっている遺産を確認します。そのうえで、実家を誰が取得するのか、いくらと考えるのか、ほかの財産とどう釣り合わせるのか、どの部分で話が止まっているのかを伺います。
誰が相続人なのか、何が相続登記の対象なのかが分からずに話せないのであれば、司法書士として事実関係を整理できます。一方、取り分や金額について相手方との交渉が必要なら、弁護士へ相談する場面です。
相続人同士の話がまとまらないときは、手続だけでなく気持ちの負担も大きくなります。ここまで話合いを重ねてきたことを否定せず、登記として確認できるところと、交渉が必要なところを分けてお伝えします。
登記で確認できることと、交渉が必要なことを整理します
- 戸籍から、遺産分割へ参加する相続人を確認する
- 現在の登記から、実家と相続登記の対象を確認する
- 分かっている遺産と、話合いに不足している情報を整理する
- 相続登記の期限と、相続人申告登記を検討できるか確認する
- 相手方との交渉が必要な場合は、弁護士へ相談する範囲をお伝えする
まだ分け方が決まっていない段階でも相談できます。これまでに集めた戸籍、不動産や預貯金の資料、相続人同士で確認した内容があれば、そのままお持ちください。
現在の登記と相続関係を確認し、話合いの前提として整理できることをお伝えします。
遺産の分け方がまとまらない相続について相談するさいたま市浦和区の司法書士・行政書士事務所相続人の意見がまとまらない場合のよくある質問
相続人の過半数が賛成していれば、遺産分割は成立しますか?
成立しません。遺産分割協議は多数決ではなく、遺産分割へ参加する相続人全員の合意が必要です。
司法書士から、反対している相続人を説得してもらえますか?
司法書士は登記や相続関係を説明できますが、一方の相続人の代理人として取り分を交渉することはできません。交渉を任せたい場合は、弁護士へ相談します。
遺産分割調停では、何をするのですか?
家庭裁判所で、裁判官と調停委員がそれぞれの事情や希望を聞き、資料を確認しながら合意を目指します。調停でまとまらない場合は、原則として審判へ移ります。
話合いがまとまらないまま、相続登記の期限が来そうです
期限のためだけに分け方を急ぐ必要はありません。相続人申告登記で申請義務へ先に対応し、遺産分割の話合いを続けられる場合があります。
相続人全員が合意できた後は、どう進めますか?
決まった内容を遺産分割協議書などの書面にし、必要な戸籍や印鑑証明書などを添えて相続登記を申請します。