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遺産分割協議書の相談事例

協議書に「何も受け取らない」と書けば相続放棄?違いをフローチャートで確認

ご相談

再構成した相談例

父が亡くなり、相続人は兄と私の二人です。実家と預貯金は兄に受け取ってもらい、私は何もいらないと伝えました。兄から「相続放棄でいいね」と言われ、遺産分割協議書に署名する予定です。これで父の借金も引き継がずに済むのでしょうか。

協議書で何も受け取らなくても、相続放棄にはなりません

遺産分割で財産を何も受け取らないことと、家庭裁判所で行う相続放棄は別です。協議書に「相続を放棄する」と書くだけで、借金の返済義務がなくなるわけではありません。まず、財産だけ受け取らないのか、借金を含めて相続しないことを希望するのかを分けて考えます。

「相続放棄した」という同じ言葉でも、ご家族の間では「私の取り分はいらない」という意味で使われることがあります。専門家がいう家庭裁判所の相続放棄と、意味が一致しているとは限りません。言葉だけで判断せず、何を希望し、どの手続きをしたのかを確かめます。

「放棄する」と決める前に、何を確認する?

  • 財産だけを受け取らないのか、借金も引き継ぎたくないのか実家を兄に任せたいという希望と、借金を含む相続から外れたいという希望では、確認する手続きが違います。
  • 家庭裁判所の手続きをしたのか、家族で話しただけなのか「もう放棄した」と聞いていても、口頭の話し合いや協議書への署名だけなのか、家庭裁判所で相続放棄の申述が受理されているのかを分けて確かめます。裁判所から届いた書類があれば、その内容を確認します。
  • 借金の資料と、相続を知った時期・これまでの手続き請求書や借入れの資料、亡くなったことと自分が相続人になったことを知った日、協議や預金払戻しなどをした状況を確認します。借金が気になる場合は、協議書への署名を急がずに検討します。

何も受け取らない合意・相続分の放棄・相続放棄は、どう違う?

方法何を決める・変えるか相続人の地位と借金
何も受け取らない遺産分割相続人全員の合意によって、特定の人が財産をもらわない分け方にします。その合意だけで相続人でなくなるわけではなく、借金の返済義務も残ります。
相続分の放棄自分の相続分を受け取らないという意思を示すものです。相続人全員で分け方を合意する遺産分割とは別です。相続人としての立場を失うわけではなく、借金(相続債務)を返済する義務も残ります。
家庭裁判所での相続放棄家庭裁判所へ申述して行う法的な手続きです。プラスの財産も借金も、一切受け継がない効果があります。有効に相続放棄をすると、その相続について初めから相続人でなかったものと扱われます。

相続分の放棄と、全員で「この人は何も取得しない」と決める遺産分割も、同じ手続きではありません。前者は自分の相続分についての意思表示、後者は相続人全員による分け方の合意です。どちらも、家庭裁判所での相続放棄に代わるものではありません。

京都家庭裁判所の案内でも、相続分の放棄をしても相続人の地位は失われず、借金(相続債務)も負担し続けると説明されています。京都家庭裁判所の遺産分割Q&A(Q7)

相続放棄なら、実家は受け取り、借金だけを放棄するという選び方はできません。財産の一部だけを受け取らない話とは分けて考えます。

家庭裁判所での相続放棄の手続きと効果は、民法938条・939条に定められています。民法(e-Gov法令検索)

「借金は兄が全部払う」と決めても、私に請求が来る?

請求が来る可能性があります。家族の間で借金の負担者を決めても、それだけで借入先などの債権者に「私は払わなくてよい」と主張できるわけではありません。家族の間の取り決めと、債権者に対する返済義務は別です。

兄弟二人で相続する架空の例

相続人は兄と自分の二人だけで、法定相続分は各2分の1。父に通常の金銭債務400万円があったとします。「財産は兄がすべて取得し、借金も兄が全部払う」と合意しても、債権者が自分の免責を認めていなければ、自分にも原則200万円の支払いを求められる可能性があります。

借金を兄一人の負担とする合意が、家族の間で無意味というわけではありません。ただし、債権者の承諾がないまま、ご自身の返済義務まで消えるとは考えないでください。松山家庭裁判所の説明でも、債務の負担者を決める合意は相続人同士の内部関係にとどまるとされています。松山家庭裁判所の遺産分割Q&A(Q1)

借金や保証債務があるかどうかが分からず、それを引き継ぐことを避けたい場合は、財産を受け取らない協議書を先に作るのではなく、家庭裁判所での相続放棄を含めて検討します。

自分の希望なら、どの手続きを確認する?

「何もいらない」と思ったときの確認フローチャート

家族との話で「相続放棄」という言葉が出た
何を受け継がないことを希望するか確認

財産の取り分だけを手放したいのか、借金を含めた相続全体から外れたいのかを分けて考えます。

いまの希望や状況は?
財産だけを受け取らない遺産分割の内容を全員で確認

自分の取得分をゼロにする分け方も選べます。誰がどの財産を受け取るかを相続人全員で決めます。

この合意だけで借金の返済義務はなくなりません。

遺産分割として進める場合

取得しない人も含め、分け方に合意

家庭裁判所で相続放棄をした人とは区別し、今回の遺産分割に参加する相続人全員で内容を確認します。

決まった取得者と対象財産を書面にする

遺産分割協議書の作成は、合意した財産の分け方を書面に残すために行います。

合意した分け方を協議書へ記載する

相続放棄ができるかどうかは、経過した期間やこれまでの手続き・財産の処分などを確認して判断します。

「財産を受け取らない」ことと、「初めから相続人でなくなる」ことを分けて確認します。

家庭裁判所への相続放棄の申述は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に行う必要があります。必ずしも亡くなった日から数えるわけではありません。調査しても判断するための資料が得られない場合は、家庭裁判所への期間伸長の申立ても検討します。裁判所の相続放棄の申述の案内

相続した不動産を売却するなど、相続財産を処分すると、相続を承認したものとみなされることがあります。すでに協議書へ署名した方も、後から相続放棄ができるかを自己判断せず、書面の内容、実際にしたことと日付を確認して相談してください。

「相続放棄した」と聞いたら、何を確かめる?

執筆・監修者の小野田敦士

小野田 敦士

  • 司法書士
  • 行政書士
  • 宅地建物取引士

「相続放棄」という言葉は、専門家と一般の方で受け取る意味に大きな差がある相続用語の一つだと感じています。ご家族が「何も受け取らないことにした」と話している一方で、専門家は家庭裁判所の手続きだと思って聞いていることがあります。

私は、何を希望し、どの手続きをしたのかを確かめます。相続分の放棄や、財産を受け取らない遺産分割を、家庭裁判所での相続放棄と同じ意味として扱うことはありません。借金も引き継ぎたくないと考えている方に、取り分をゼロにする協議書だけをご案内することもありません。

財産の分け方が決まっている方へ

合意した分け方を、協議書にまとめたいときは?

  • 亡くなった方と、協議に参加する相続人を入力する
  • 不動産や預貯金と、それぞれの取得者を入力する
  • 作成した書面で対象財産と取得者を確認する

作成ツールで自分に財産を割り当てなくても、家庭裁判所での相続放棄にはなりません。借金を含めた相続の扱いが決まっていない場合は、先に確認しましょう。何も受け取らない方も、家庭裁判所で相続放棄した方とは区別し、協議に参加する相続人として入力します。

相続人全員で決めた分け方を、画面に沿って入力して書面にできます。

遺産分割協議書を自分で作成する

財産を受け取らない場合の手続きに迷う方へ

協議書と相続手続きの進め方を相談する
無料/合意した財産の分け方を書面に
「相続を放棄する」と協議書に書けば、効力は変わる?

言葉を書き換えるだけで、家庭裁判所の相続放棄になるわけではありません。財産を受け取らない合意なのか、相続分の放棄なのかは、書面の内容やこれまでの経緯を確認して判断します。借金まで引き継ぎたくない場合は、協議書の表現だけで解決しようとしないでください。

何も取得しない人は、協議書に署名しなくてもよい?

家庭裁判所で相続放棄をした場合とは異なり、遺産分割で財産を取得しない方も、協議に参加する相続人です。取得する方だけで決めず、相続人全員で合意し、協議書に署名・押印します。相続人全員の合意について読む

相続放棄は、家族全員の同意が必要?

家庭裁判所での相続放棄は、各相続人が自分について申述する手続きで、ほかの相続人全員の同意を得るものではありません。放棄により、次の順位の方が相続人になることもあるため、その後の相続関係も確認します。

後から借金が分かったら、3か月を過ぎていても相談できる?

まずは相談してください。いつ相続の開始を知ったか、なぜ財産や借金がないと考えたのかという事情、そしてこれまでに行った手続きなどによって判断が変わります。「借金を知った日から必ず3か月ある」とは限りません。請求書や署名済みの書面があれば、それらも手元に用意して確認します。

成人した相続人が、自分の意思で遺産の分け方を決める一般的な場合の説明です。相続放棄ができるかどうかや相続債務の範囲は、具体的な事情や書類に応じて確認します。

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