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遺産分割協議の相談事例

遺産分割は法定相続分どおりに分ける必要がありますか?

ご相談

再構成した相談例

父が亡くなり、相続人は母と兄と私の3人です。母が実家を相続し、預貯金は兄と私で分ける話になっています。法定相続分は母が2分の1、兄と私がそれぞれ4分の1と読みました。家の価格まで計算して、この割合ぴったりに分けないと、協議書や相続登記に使えないのでしょうか。

相続人全員が合意すれば、法定相続分どおりに分ける必要はありません

法定相続分どおりに分ける必要はありません。相続人全員が同じ内容を理解し、合意していれば、ご家族に合った分け方を選べます。法律の割合ぴったりに合わせる計算よりも、まずは誰が何を受け取るかについて、全員の希望と合意を確かめるところから始められます。

「法律に割合が書いてあるのだから、そのとおりにしないといけない」と考える方もいらっしゃいます。法定相続分は、全員が合意した分け方を禁止するものではありません。実家を1人が取得したり、受け取る財産の額に差が出たりしても、それだけで遺産分割協議書や相続登記に使えなくなるわけではありません。

割合を計算する前に、全員で共有したいこと

  • 協議に参加する相続人が全員分かっている家族の記憶だけで決めず、戸籍から相続人を確認します。一部の相続人だけの合意や多数決では、遺産分割協議はまとまりません。参加する方の確認は「誰が遺産分割協議へ参加しますか?」で説明しています。
  • 何を分けるのか、同じ資料で確認できている実家だけでなく、預貯金など今回分ける財産を全員で共有します。取り分に差をつける場合でも、財産の内容や大まかな価値を把握したうえで話し合います。
  • 誰が何を受け取るか、全員が納得している「母が実家を取得する」「預貯金は兄弟で分ける」など、最終的な内容までそろえます。返事がないことを、賛成したことにはできません。

母が実家を取得しても、必ず2分の1へ合わせる必要はありません

今回の相談例では、母が実家を取得し、兄弟で預貯金を分ける内容に全員が合意できれば、その形で進められます。母の取得額が遺産全体の2分の1を超えても、その理由だけで母から子へ差額を支払う必要はありません。

もちろん、実家の価格を確認し、差額をお金で調整する選択もできます。ただ、それはご家族が選ぶ分け方であって、法定相続分へ合わせるために必ず行う作業ではありません。お金で調整する方法は「家を1人が取得する代償分割」で説明しています。

  • それぞれの希望を話す

    誰が実家に住み続けるか、誰が預貯金を受け取りたいかを出し合います。法定相続分を目安にしても、別の割合を提案しても構いません。

  • 財産ごとの取得者を決める

    どの土地や建物を誰が取得し、どの口座の預貯金をどう分けるかを具体的にします。お金で調整する場合は、金額や支払期限も一緒に決めておきます。

  • 全員が合意した内容を協議書へまとめる

    決まった分け方を全員で確認し、遺産分割協議書として書面に残します。不動産については、その合意内容に沿って相続登記へ進めます。

調停でも合意できます。審判では法律の基準が土台になります

全員が合意できる場合と、合意できず裁判所に決めてもらう場合は、同じではありません。話合いがまとまらず家庭裁判所の調停へ進むと、法定相続分が重要な基準になります。ただし、調停も合意を目指す話合いです。全員が合意すれば、法定相続分と異なる分け方にできます。

進め方法定相続分との関係
家族での遺産分割協議全員が合意すれば、法定相続分と異なる割合で分けられます。
家庭裁判所の調停法定相続分を重要な基準に話し合います。全員が合意すれば、異なる分け方も可能です。
家庭裁判所の審判合意できないとき、裁判所が法律に基づいて決めます。法定相続分を土台に、特別受益や寄与分なども検討されます。

審判では、「家族なのだから、この取り分でよいはず」という一方の希望だけで、ほかの相続人の取り分を減らすことはできません。一定の生前贈与(特別受益)や特別な貢献(寄与分)を考慮する制度にも、要件や期間の制限があります。介護をした、同居していたという事情だけで、当然に取り分が増えるわけではありません。

取り分を巡って意見が対立している場合は、弁護士へ相談する段階です。別の分け方を希望できることと、その分け方に相手も合意していることは、同じではありません。

私なら、割合に合わせることより、全員の合意を確認します

執筆・監修者の小野田敦士

小野田 敦士

  • 司法書士
  • 行政書士
  • 宅地建物取引士

法定相続分どおりにしなければならないと思っている方は、少なくない印象です。全員の希望がそろっているのに、割合へ合わせるためだけに、実家を共有にしたり、差額を支払ったりする必要はありません。

大切なのは、全員が同じ内容を理解して合意していることです。一方、合意がないときには法定相続分が重要になります。「自由に決められる」と「一人で自由に決められる」は違います。

全員で分け方が決まったら

合意した内容を、遺産分割協議書へまとめられます

  • 亡くなった方と相続人の情報を入力する
  • 不動産・預貯金などの財産と、取得する方を入力する
  • 相続人ごとの遺産分割協議証明書をPDF出力する

作成ビルダーは、決まった内容を書面に整えるためのツールです。取り分を自動で決めたり、合意のない話合いを解決したりするものではありません。

誰が何を受け取るかが決まっていれば、その内容から書面の作成を始められます。

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法定相続分と遺産分割でよくある質問

相続人の1人が、財産を何も受け取らない分け方もできますか?

本人も含めて全員が合意していれば、できます。ただし、協議で財産を受け取らないことと、家庭裁判所で行う相続放棄は別です。財産を受け取らない合意をしただけで、亡くなった方の借金の返済責任までなくなるわけではありません。

一人だけが反対している場合、ほかの相続人で決められますか?

決められません。法定相続分と違う分け方も、同じ割合の分け方も、遺産分割協議として進めるには全員の合意が必要です。詳しくは「相続人が1人でも欠けるとどうなりますか?」で説明しています。

法定相続分があるなら、不動産もその割合の共有にする必要がありますか?

共有にする必要はありません。全員が合意すれば、実家を1人の単独名義にできます。ほかの財産を配分する方法や、お金で調整する代償分割、売って分ける換価分割も選べます。詳しくは「1つの不動産を兄弟で分ける方法は?」をご覧ください。

遺言書がある場合も、同じように決めてよいですか?

まず遺言の内容を確認します。遺言と異なる分け方には、相続人以外の受遺者や遺言執行者なども関係するため、相続人の合意だけで決められるとは限りません。「遺言と違う分け方にできますか?」で分けて説明しています。

この記事は、遺言による指定がなく、成人した相続人全員で遺産分割を話し合う場面を中心に説明しています。未成年者や判断能力に課題のある方がいる場合、相続分の譲渡などがある場合は、参加者や合意の方法について個別の確認が必要です。

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