家を1人が取得して、ほかの相続人へお金を払う形にできますか?
ご相談
父の遺産は、主に実家です。相続人は兄と私の2人で、兄は今後も実家に住みたいと言っています。兄が実家を相続し、代わりに私へお金を払う形にできますか。支払ってもらう金額や時期は、どこまで決めればよいでしょうか。
家を1人が取得し、自分のお金から代償金を払う形にできます
できます。家を取得する人が、自分の預貯金などからほかの相続人へお金を払う分け方を、代償分割といいます。金額は家だけを人数で割らず、預貯金などを含む遺産全体から考えます。まず、家をいくらとして話し合うかを決めます。
代償分割という言葉の意味や、現物分割・換価分割との違いは「代償分割とは?」で説明しています。この記事では、家を1人が取得する相談をもとに、代償金を決めて遺産分割協議書へ書く手順に絞って説明します。
話合いを始める前に、3つ確認します
- 誰が、どの不動産を取得するか土地と建物だけでなく、私道持分や離れ、未登記建物なども確認します。家を取得する人と、協議書に載せる不動産の範囲をあらかじめそろえます。
- 家をいくらとして話し合うか固定資産税評価額、相続税評価額、不動産会社の査定額は、それぞれ計算の目的が違います。どの価格を土台にするか、ほかの預貯金や債務も含めて相続人全員で確認します。
- 取得する人が、実際にいくら支払えるか自己資金で一括払いできるか、借入れが必要か、分割払いにするかを確認します。計算上の金額だけでなく、実際に支払える資金計画が必要です。
金額と支払条件を決めてから、協議書へ進みます
- 不動産と、ほかの遺産を確認する
家だけを見て決めず、預貯金、有価証券、債務など、分ける対象をそろえます。遺産に含まれる預貯金を一方が多く取得するだけなら、その部分は通常、現物分割として扱います。
- 不動産の評価方法をそろえる
相続人全員が同じ価格資料を見て、代償金を考える土台を決めます。特定の評価方法だけが必ず正しいわけではありません。
- 取得割合と代償金を話し合う
法定相続分は話合いの目安になりますが、相続人全員が合意すれば、必ず同じ割合にそろえる必要はありません。家の評価、ほかの遺産、これまでの話合いを合わせて金額を決めます。
- 支払える日と方法を決める
一括か分割か、いつまでに支払うか、どの口座へ振り込むかを決めます。借入れを予定するなら、金融機関へ相談し、資金を用意できる時期も確認します。
- 不動産の取得と代償金を、同じ協議書へ書く
誰が家を取得するかと、誰が誰へ代償金を支払うかを一つの合意として記載します。相続人全員が内容を確認してから、署名と実印の押印へ進みます。
代償金は、家だけを人数で割らず、遺産全体から考えます
最初に、家をいくらと見るかを相続人全員でそろえます。固定資産税評価額、相続税評価額、不動産会社の査定額は同じ金額とは限りません。どの価格を使って代償金を話し合うかを先に決めます。価格の違いは「実勢価格とは?」と「固定資産税評価額とは?」でも説明しています。
売却価格の目安がまだない方は、名前や電話番号を入力せずに使える「実家の簡易査定」で概算を確認できます。簡易査定は、建物の状態や道路、土地の形などを確認する前の目安です。表示された金額だけで代償金を決めず、相続人が同じ目安をもとに話し始めるために使います。
次に、家、預貯金、有価証券などの遺産を並べます。各相続人が受け取る目安を決め、実際に取得する財産との差額を代償金のたたき台にします。
遺産全体
実家3,000万円+預貯金500万円=3,500万円
1人分の目安
3,500万円÷2人=1,750万円
実際の分け方
兄が実家3,000万円、弟が預貯金500万円を取得
代償金
兄の3,000万円−目安の1,750万円=1,250万円
支払った後
兄は実質1,750万円、弟は500万円+1,250万円=1,750万円
1,250万円は、兄弟が法定相続分と同じ2分の1ずつ受け取る前提の例です。代償金の金額に一律の決まりはありません。相続人全員が合意できれば、必ず法定相続分どおりにする必要はありません。まず同じ資料で家の価格を確認し、ほかの遺産と希望する分け方を合わせて決めます。
相続税の申告がある場合、話合いに使った家の価格と、相続税を計算するときの評価額が同じとは限りません。申告内容と代償金の扱いは、協議書へ署名する前に税理士へ確認します。
協議書には、代償金の5つの条件を書きます
| 決めること | 協議書で明確にする内容 |
|---|---|
| 金額 | 誰が、誰へ、いくら支払うか |
| 支払期限 | 何年何月何日までに支払うか。分割なら各回の期日 |
| 支払方法 | 指定口座への振込みなど、支払いの事実を確認できる方法 |
| 振込先 | 金融機関名、支店名、口座種別、口座番号、口座名義 |
| 振込手数料 | 支払う人と受け取る人のどちらが負担するか |
兄は実家の土地・建物を取得し、その代償として弟へ1,250万円を2026年12月25日までに指定口座へ振り込む。振込手数料は兄が負担する――というように、不動産の取得と支払いを続けて書きます。実際の金額と期限は、その家族の合意で決めます。
分割払いにするなら、各回の金額と期日まで具体的に書きます。支払いが長期になる場合や、未払いに備えた定めを置きたい場合は、協議書へ署名する前に弁護士などへ個別に確認します。
私なら、金額と一緒に、支払える日を確認します

小野田 敦士
- 司法書士
- 行政書士
- 宅地建物取引士
家の評価を2分の1にして代償金を計算しても、取得する人がその金額を用意できなければ、協議書どおりに進みません。借入れには審査があり、家の取得後も固定資産税や修繕費の支払いが続きます。
私なら、評価額だけを先に確定させず、支払える金額と期日を同時に確認します。無理のない支払いにできないときは、ほかの遺産の配分を見直したり、実家を売って分ける換価分割も比べます。
決めた代償分割を、協議書と相続登記につなげます
- 土地・建物・私道持分など、取得する不動産の範囲を確認する
- ほかの遺産と代償金を含め、合意した分け方をまとめる
- 金額・期限・支払方法・振込先・手数料負担を協議書へ記載する
- 協議書の内容に合わせて、不動産の相続登記を申請する
不動産の評価や代償金を巡って争いがある場合は弁護士へ、相続税の申告や具体的な税額は税理士へ相談する範囲です。浦和ホームでは、相続人全員が合意した内容を協議書と相続登記へつなげます。
家を取得する人と代償金の方向が決まったら、支払条件の確認から登記の申請まで一緒に進められます。
代償分割の協議書と相続登記を相談するさいたま市浦和区の司法書士事務所/全国の不動産に対応家を1人が取得する代償分割でよくある質問
弟が遺産に含まれる預貯金を多く受け取る場合も、代償分割ですか?
遺産に含まれる預貯金を兄弟へ割り振る部分は、通常は現物分割として扱います。代償分割は、家を取得する兄が、自分の資金から弟へ支払う形です。違いは「現物分割とは?」でも説明しています。
代償金は、家の価格の2分の1にしなければなりませんか?
必ず2分の1にする決まりではありません。家の評価方法、ほかの遺産や債務、各人の取得割合を確認し、相続人全員が合意できる金額を決めます。相続税の申告がある場合は、税務上の評価も税理士へ確認します。
代償金を分割払いにできますか?
相続人全員が合意すれば可能です。各回の金額と期日を協議書へ書き、現実に支払いを続けられるかを確認します。長期の支払いや未払い時の取り決めまで決める場合は、個別に専門家へ相談します。
代償金を支払う前に、家の相続登記をしてもよいですか?
登記と支払いをどの順番で進めるかも、相続人全員で確認します。先に登記をすると受け取る側に未払いの心配が残るため、金額が大きい場合や支払いが長期になる場合は、進め方を個別に検討します。