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遺産分割協議書の相談事例

葬儀費用は遺産から精算できる?遺産分割協議書の書き方とフローチャート

ご相談

再構成した相談例

父の葬儀費用を、私の預金から支払いました。実家と預貯金の分け方を話し合うときに、この費用を遺産から返してもらいたいと考えています。ただ、葬儀に参列していない相続人もいて、費用を負担することまで了解を得ていたわけではありません。協議書には、どのように書けばよいでしょうか。

全員で合意すれば、立替分を遺産から精算できます

相続人全員の合意があれば、立て替えた葬儀費用を遺産から精算し、その方法を遺産分割協議書に書くことができます。ただし、相続人だからといって当然に同じ割合で負担する決まりがあるわけではありません。まず、誰が何にいくら支払い、いくら返してほしいのかを具体的に確かめることから始めます。

手元に領収書があることと、ほかの相続人がその費用を負担することに合意しているかは別です。金額だけでなく、遺産の預金から出すのか、特定の誰かが負担するのかまで確認してから文面にします。

精算を話し合う前の、確認すべき3つのポイント

  • 誰が、何のお金で支払ったかご自身の預金から支払ったのか、亡くなった方の預金から支払ったのかを分けます。請求書の宛名と、実際に支払った人が同じとは限りません。手元の領収書と、通帳の振込や引き落としの記録を確認します。
  • 今回、いくらの精算を求めるか葬儀社への支払い、お布施、火葬費用などの内訳を示します。すでに返してもらったお金や、香典などを費用へ充てた分があれば、同じ支払いを二重に精算しないようにします。
  • 費用の負担について、どこまで話していたか葬儀の前後に誰と何を話したか、金額や遺産から出すことの了解をとっていたかを確かめます。葬儀へ参列したことや、実家を相続することだけをもって、費用の負担に同意したとは扱えません。

葬儀に参列していない相続人にも、負担を求められる?

葬儀に参列していないことだけで、費用を負担する、あるいは負担しなくてよいと決まるわけではありません。事前に費用の負担を約束していたか、誰が葬儀を依頼したか、どの費用について話しているのかを確認します。

葬儀を手配して支払った側と、連絡を受けていなかった側とでは、それまでの経緯について知っていることが異なる場合があります。「事前に費用の相談を受けていなかった」「その金額になるとは聞いていなかった」という受け止め方の違いが、精算を話し合う段階で初めて分かることもあります。

そのときは、参列したかどうかを責める話にせず、手配の経緯と支払いの内訳を共有します。急いで手配した事情があればそれも説明し、相手の方がどこまで聞いていたか、どの部分に納得できていないかを確かめます。

葬儀社との契約で誰が支払義務を負っているかと、家族の間で最終的にどう分担するかは別の問題です。家族の間で負担者を決めたからといって、葬儀社に対する契約上の支払義務まで当然に変わるわけではありません。

葬儀費用は、亡くなった時点ですでに存在していた借金のように、当然に法定相続分で分担するものとはいえません。合意がない場合には、費用の種類や契約内容、手配の経緯などによって法的な判断が分かれます。ここでは、全員が納得した精算の内容を遺産分割協議書へ記載する方法を扱います。

領収書の合計を、そのまま返してもらう金額にしてよい?

支払った費用のすべてを、当然に遺産から出せるわけではありません。領収書の合計を出したうえで、実際に自分で立て替えた額と、今回全員で精算すると合意した額を分けて記録しておきます。

確認する項目記録する内容
支出の内訳支払日、支払先、内容、金額です。葬儀、法要、墓地・墓石などを一括りにせず、項目ごとに書き出します。
支払った人と原資誰が自分のお金を出したかを確認します。遺産からすでに支払った分がある場合は、個人の立替分と区別します。
すでに充当・精算した金額遺産から受け取った精算金や、香典などを費用に充てた額があれば書き留めます。香典の帰属や使途も確認し、当然に遺産と同じ扱いにはしません。
今回合意する精算額費用のうちどこまでを対象にするか、遺産から返す額や、家族が個別に負担する額を決めます。
支払いの段取りどの預金から出すか、誰が払戻しや送金の手続きをするか、受取人、支払期限、振込先と手数料の負担を決めます。

お布施など領収書が出ていない支出は、支払日・相手先・内容・金額・支払者を分かる範囲で記録します。記録があるだけで相手の負担が確定するわけではありませんが、何の支出だったかを説明する助けになります。

計算方法を示す架空の例

父の預金600万円を子二人で分ける際、子Aが自己資金で支払った葬儀費用120万円を先に精算する、と全員で合意した場合の例です。預金から120万円をAへ返し、残った480万円を240万円ずつ取得します。Aへの立替分の返還と、遺産の取得分を別々に書くことで、金額の計算を確認しやすくなります。

この例は、120万円全額をAが支払い、まだ精算を受けておらず、香典などの充当もない前提での計算です。実際にこの金額や分け方にしなければならないわけではありません。

遺産分割協議書の葬儀費用は、どう書く?

「葬儀費用は遺産から支払う」だけでは、すでに立て替えた分の返還なのか、これから払う費用なのかが分かりにくくなります。対象の費用、立替者、精算額、支払方法を具体的に書きます。以下は、全員で合意した場合の文例です。

遺産の預金から立替分を精算する文例(架空の例)
相続人全員は、相続人Aが自己資金で支払った被相続人の葬儀費用のうち、別紙「葬儀費用精算一覧」に記載した金120万円を、被相続人の下記預金からAに返還することを合意する。 相続人Bは、下記預金の払戻手続きを行い、令和8年12月15日までに、A名義の下記口座へ金120万円を振り込んで支払う。振込手数料は同預金から支出する。 〔払戻しをする預金の金融機関・支店・種別・口座番号〕 〔Aの振込先の金融機関・支店・種別・口座番号・口座名義〕

A・Bは説明用の表記です。実際にはそれぞれの氏名、精算一覧、預金の表示、期限、振込先に置き換えます。残りの預金を誰がどの割合で取得するかや、振込手数料を差し引く扱いも、財産の分け方を定める条項と一致させます。金融機関での払戻しに必要な所定の書類や手続きは、あらかじめ確認しておきます。

精算一覧には、支払日、支払先、内容、支払額、支払った人、今回精算する額を記載すると、どの支出についての合意なのかを特定しやすくなります。協議書の別紙にする場合は、本文から別紙を特定できるようにし、全員が同じ内容を確認できるように綴じます。

家族がそれぞれ負担し、立替者へ支払う文例(架空の例)
相続人全員は、相続人Aが自己資金で支払った被相続人の葬儀費用金120万円について、A及び相続人Bが各60万円を負担することを合意する。Bは、Aに対し、令和8年12月15日までに、負担分金60万円を下記のA名義の口座へ振り込んで支払う。振込手数料はBの負担とする。 〔振込先の金融機関・支店・種別・口座番号・口座名義〕

遺産の預金から120万円を返す先ほどの文例とは、別の負担方法です。同じ費用について両方を重ねて使うのではなく、合意した方法に合わせてどちらかを選びます。人数や費用の範囲、金額は実際の合意内容に合わせて直します。

別紙の扱いと本文の書き方や、契印の押し方は、関連記事で説明しています。費用の合意を別の精算合意書にまとめる方法もあります。合意がないのに、協議書へ負担額を書いて確定したものとして扱うことは避けます。

いまの合意状況なら、何から進める?

葬儀費用の立替・精算フローチャート

葬儀費用の立替分を精算したい
支払った金額と原資を確認

領収書や通帳の記録から、自分のお金で出した分と、すでに返してもらった分を分けます。

対象の費用・精算額・負担方法について、相続人全員で合意している?
全員で合意している支払方法を具体的に決める

遺産のどの口座から出すか、誰が払戻しや送金の手続きをするか、期限と振込先まで確認します。

全員で合意できた場合

合意した精算方法を協議書へ記載

金額、受取人、送金手続きをする人、支払期限を明記し、預金の分け方と二重計上になっていないかを確認します。

全員が文面を確認し、署名・実印で押印

本文と別紙を照らし合わせ、精算額と取得額が合意どおりになっているかを確認します。

払戻し・送金後も精算の記録を保管する

精算を請求する権利や支払義務の有無を判定するものではありません。全員の合意がない場合の法的な結論は、個別の経緯やお持ちの資料によって異なります。

いまの合意状況を選ぶと、文面にする前に確認すべきことがフローチャートで分かります。

家族での話し合いがまとまらない場合、葬儀費用も家庭裁判所の遺産分割審判で当然に決めてもらえるわけではありません。遺産分割調停で預貯金などと一緒に話し合うにも、相続人全員の承諾が必要です。精算の請求そのものが争いになっているときは、どの手続きが適切かを弁護士へ確認します。

私なら、参列の有無より、費用をめぐる認識の違いを確かめます

執筆・監修者の小野田敦士

小野田 敦士

  • 司法書士
  • 行政書士
  • 宅地建物取引士

葬儀の手配を急ぐなかで、費用について十分に相談できなかった場合もあるでしょう。一方で、連絡を受けていなかった方は、費用の話を初めて聞くこともあります。私は、どちらかを責める説明にせず、費用についてどこまで聞いていたか、どの支出に合意できているのかを確認したいと考えています。

精算の合意ができたら、誰がいつお金を受け取るのかまで書面にします。実家を誰が取得するかや売却代金の分け方を決める場合にも、立て替えた分をどこで精算するのかが分かる形にしておきます。

負担する費用と精算方法が決まったら

合意した葬儀費用の条項を、協議書へ追加できます

  • 相続人と財産の分け方を入力する
  • 「条項を追加」から「葬儀・祭祀」を選ぶ
  • 負担方法に合う文面を選び、金額や支払方法を編集する
  • プレビューで確認し、相続人ごとの書面を出力する

書面作成や相続登記を任せたい方は、分かる範囲の事情からお聞かせください。費用の負担をめぐる交渉が必要な場合は、弁護士の担当となる点も含めて、必要な対応をご案内します。

「葬儀費用(相続財産から支出)」「葬儀費用(金額・振込先あり)」などの条項を、合意内容に合わせて書き換えられます。

葬儀費用の条項を入れて協議書を作成する

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相続税で控除できる費用なら、家族にも負担を求められる?

相続税の計算上の控除と、家族の間での負担や精算は別の話です。国税庁は控除対象となる葬式費用の範囲を案内しており、香典返しや墓地・墓石、法事の費用などを対象外としています。ただし、家族がどの費用を負担するかは、その税務上の区分だけで決まるわけではありません。相続税申告での具体的な扱いは、税務署や税理士へ確認します。国税庁「相続財産から控除できる葬式費用」

「葬儀、法要その他一切の費用」という定型文をそのまま使ってよい?

将来の法要などまで負担する合意なのかを確認します。今回の葬儀の立替分だけを精算するなら、作成する方が、その範囲と金額が分かる文面に直します。ツールの定型文が、そのままご家族の合意になるわけではありません。

亡くなった方の預金から、すでに葬儀費用を払っていたら?

自己資金で立て替えた分とは分けて、払戻日・金額・支払先・残金を記録して全員へ説明します。同じ費用を立替分としてもう一度受け取らないようにします。相続放棄を検討している場合は、預金の使用や精算を進める前に個別の確認が必要です。

精算一覧を協議書の別紙にしてもよい?

別紙にしても構いません。その場合は、協議書の本文から対象の別紙が明確に特定でき、全員が同じ内容を確認して合意できる形にします。なお、不動産や預貯金を示す財産目録と、立替費用の精算一覧は役割が異なるため、混ざらないよう区別して表示します。協議書の本文と別紙の分け方や、契印の押し方も参考になります。

亡くなった後にご家族が葬儀を手配し、成人の相続人がそれぞれの意思で費用の負担を話し合う一般的な場合の説明です。生前の契約や遺言がある場合、相続放棄を検討している場合、争いのある精算請求などは、個別の事情に応じて確認します。

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