相続人と連絡が取れない場合、遺産分割協議はどう進めますか?
ご相談
父が亡くなり、兄弟3人で実家と預貯金を分けることになりました。弟とは長年連絡を取っておらず、電話番号も分かりません。住所を調べて手紙を出せば、弟から返事をもらえるでしょうか。返事がなかった場合、残りの2人で遺産分割協議書を作れますか。
住所を確認して手紙を送っても、返事がなければ協議書は完成しません
戸籍で相続人を確かめ、戸籍の附票や住民票などで確認した住所へ手紙を出すことから始めます。ただ、住所が分かることと、そこに本人が住んでいて返事をくれることは別です。返事がないまま、その方を除いて遺産分割協議書を作ることはできません。
次に確かめるのは、手紙が届いたかどうかです。届いているのに返事がない場合と、郵便が戻り、調べても所在が分からない場合では、使う手続が異なります。
手紙を出す前と後に、何を確認しますか?
- 今回の相続人は誰かまず戸籍で相続人を確定します。以前は兄弟3人と思っていても、その後に相続人が亡くなっていれば、連絡する相手が変わります。詳しくは「誰が遺産分割協議へ参加するか」で説明しています。
- 住所の記録を確認できるかその方の住所を、戸籍の附票や住民票などで確認します。親族だから誰の住民票でも自由に取れるわけではなく、請求理由や相続関係を示す資料を求められます。
- 手紙は戻ってきたか手紙を送ったら、返送されたか、届いたことが確認できたかを記録します。配達された記録だけで、本人が読んだ、分け方に同意したとは判断しません。
返事がなかったら、どの手続になりますか?
最初の手紙には、亡くなった方との関係、相続が始まったこと、分ける予定の財産、返信先を書きます。いきなり署名・押印を求める協議書だけを送らず、まず話し合いたいことを伝える方法がよいでしょう。
| 手紙と連絡の状況 | 次に考えること |
|---|---|
| 本人から返事がある | 財産と分け方を共有し、相続人全員で協議します。全員が一か所に集まる必要はなく、郵送などで各自が内容を確認できます。 |
| 住所は確認できるが返事がない | 返事がないことを同意や相続放棄として扱うことはできません。連絡方法を再確認し、当事者間で話し合えないときは家庭裁判所の遺産分割調停を検討します。調停で話し合いがまとまらなければ、原則として審判手続が始まり、裁判所が分け方を判断します。 |
| 郵便が戻り、居所も分からない | 住所の記録やほかの手掛かりを調べても居所が分からなければ、家庭裁判所へ不在者財産管理人の選任を申し立てる方法があります。管理人が遺産分割協議に参加するには、さらに家庭裁判所の許可が必要です。 |
「手紙が戻らない」だけで、そこに本人が住んでいると確定するわけでもありません。反対に、返事がないという理由だけで不在者財産管理人を選べるわけでもありません。不在者財産管理人を検討する条件は、住所記録、郵便の状況などから居所を確認したうえで判断します。
行方不明が長く続いている場合は?
生死が長期間分からない場合には、失踪宣告という別の手続もあります。通常は生死不明が7年間続くことなどが要件で、宣告されると法律上死亡したものとみなされます。「何年も返事がないから」というだけで使う手続ではありません。その方を相続する人の確認も必要になるため、個別に検討します。
最初から協議書を送らず、手紙で相続を知らせます

小野田 敦士
- 司法書士
- 行政書士
- 宅地建物取引士
連絡が途絶えている相続人へ、完成した遺産分割協議書を突然送っても、署名をお願いする理由や財産の内容が伝わりません。まず相続人と住所を確認し、相続が始まったことと、話し合いたい内容を手紙で知らせます。
返信がなければ、郵便の結果と住所の記録を見ます。本人の居所が分かるのに話し合いに応じないのか、それとも居所自体が分からないのかを確認します。その結果に応じて、遺産分割調停または不在者財産管理人の選任を検討します。
連絡する相手と住所を確認し、必要な手続を整理します
- 戸籍による相続人の確認
- 住所を確認するための資料の収集
- 不動産の登記内容の確認
- 協議が成立した後の相続登記
相続人間の交渉や調停で一方の代理人が必要な場合は、弁護士へ相談する範囲です。
相続人の確認と住所調査から、相続登記までご相談いただけます。
連絡が取れない相続人のいる相続を相談する集めた戸籍や、分かっている以前の住所があれば、そのままお知らせください。関連Q&A
手紙を送れば、返事がなくても協議が成立しますか?
いいえ。手紙を送った事実や配達された記録は、分け方への同意を意味しません。全員の合意がないまま、ほかの人だけで協議書を完成させることはできません。
住所が分からなければ、すぐ不在者財産管理人を申し立てますか?
以前の住所しか知らない段階では、まず戸籍の附票や住民票などで住所を確認します。公的な記録や郵便の状況などを調べても居所が分からない場合に検討します。
返事を待つ間、相続登記の期限はどうしますか?
不動産の分け方が決まらなくても、相続人申告登記などで申請義務に対応する方法があります。ただし、誰が不動産を取得するかは決まりません。期限が近い場合は、協議とは別に対応を検討します。